逆流性食道炎ガイド

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逆流性食道炎と腹圧の話。

これまで横隔膜・肥満など、様々な角度から逆流性食道炎について調べてきました。振り返ってみると、実はこれらの話には共通して登場するキーワードがあります。それが腹圧です。

その名の通りお腹にかかる圧力のことで、私たちの仕事・生活・運動などの活動をする中でとても重要な役割を果たしていますが、これが胃酸の逆流に大きな影響があるということは意外と知られていないように思います。

今回は一度立ち止まって、「腹圧とは何か」「何が腹圧を高めるのか」「なぜ腹圧が高いとよくないのか」を整理してみたいと思います。これまでの関連記事のまとめ的な内容になります。

そもそも腹圧とLESの関係

逆流性食道炎は、胃の内容物が食道に逆流することで起こります。この逆流を防いでいるのが、胃と食道の境目にあるLES(下部食道括約筋)という「弁」のような筋肉です。

医学論文では、逆流が起こるメカニズムとして主に3つが挙げられています。

(a) a transient complete relaxation of the lower oesophageal sphincter (TLOSR), (b) a transient increase in intra-abdominal pressure which overcomes the resistance of the antireflux barrier ('stress reflux') and, (c) a spontaneous reflux through a permanently hypotonic sphincter.

(a) LESの一時的な完全弛緩 (b) 腹圧の一時的な上昇が抗逆流バリアの抵抗力を上回ること(ストレス逆流) (c) 慢性的に緊張の低いLESを通じた自然な逆流。

出典:Pandolfino & Kahrilas, 1998

このうち(b)が、まさに「腹圧」によって引き起こされる逆流です。

  1. お腹の中の圧力が高まる
  2. 胃が圧迫される
  3. 胃酸の逆流を防いでいるLESという弁が耐えられなくなる
  4. 胃の内容物が食道に逆流する

ということですね。

何が腹圧を高めるのか

これまでこのブログで取り上げてきたテーマの多くが、実はこの「腹圧の上昇」につながっています。

筋トレ・激しい運動

逆流性食道炎の意外な原因で書いたとおり、ベンチプレスなどの筋トレや激しい運動は腹圧が高まりがちです。トレーニングに関する本や記事を読んでいると腹圧を高めるというのはとても重要な要素であるようです。逆流性食道炎を避けるという観点から見ると、やはり激しい筋トレや運動は避けるべきかもしれません。

ただ、特に高齢者にとって最低限の筋肉をつけることは健康面から大事であるとも言われています。このあたりは、かかりつけの医師に相談の上で少しずつ試してみるといいかもしれません。

私自身、筋トレをすると直後に割と強い胃もたれの症状があります。ベンチプレスがだめなら他の種目をということでいろいろ試してみましたが、やはりお腹に力を入れなければならないため、どれもNG。現在は軽い重量でのスクワットなら問題なさそうなので、ほそぼそと続けている状態です。

一方、ウォーキングなどの有酸素運動は各所で推奨されているので、無理のない範囲で続けるとよいと思います。

肥満・内臓脂肪

逆流性食道炎と肥満の話で取り上げたとおり、内臓脂肪の増加そのものが腹腔内の圧力を物理的に高めます。アメリカ消化器病学会(ACG)のガイドラインでも「内臓脂肪の増加による腹腔内圧の上昇」が逆流性食道炎のリスク要因として明記されています。

私自身は痩せ型なのでこれについて体験談を語ることができないのですが、肥満は逆流性食道炎のみならず他の疾患にとっても数多くの悪影響が指摘されているので、痩せるに越したことはないかもしれません。

便秘

これまでこのブログでは取り上げていませんでしたが、便秘も腹圧を高める要因の一つとされています。

ジェネリック医薬品の沢井製薬が運営する「サワイ健康推進課」では、松生クリニック院長の松生恒夫医師が次のように説明しています。

若い人に逆流性食道炎が起こる原因の1つは、「便秘」によって腹圧が高まることです。お腹が張っている時、胃は腸からの圧迫を受け、食道への逆流が起こりやすい状況になるのです。当院では常習性便秘症の人の約10%に逆流性食道炎がみられ、慢性的な便秘によって常にお腹が張った状態になると、若い人でも逆流性食道炎が起こりやすいことが分かっています。

出典:サワイ健康推進課 - 逆流性食道炎とは?

便秘になると腸の中に便やガスが溜まり、お腹が張った状態になります。これが胃を圧迫し、結果的に胃酸が逆流しやすい状況を作ってしまうということのようです。

松生医師によると、ご自身のクリニックでは常習性便秘症の患者の約10%に逆流性食道炎が見られるとのことで、便秘と逆流性食道炎の関係は、決して無視できないものだと感じました。

腹圧への「対策」となるのが横隔膜

ネガティブな情報が続いて気が滅入ってしまうかもしれませんが、対策がないわけではありません。

逆流性食道炎と横隔膜の話で取り上げたとおり、横隔膜を意識して動かすことで、LESへのサポートを強化できる可能性があります。腹圧が上がりやすい要因が多い中でも、横隔膜を鍛えることで「腹圧に対抗する力」を高めるという発想です。

詳しくは上の記事を読んでいただければと思いますが、意識して呼吸を繰り返し横隔膜を動かすことで、間接的にLESの機能が強化されるということです。腹圧を高めないように気をつけることも大切ですが、横隔膜を意識することで逆流を抑止できるかもしれないというのは、私にとって大きな気付きで、以降深い呼吸で横隔膜を動かすことを意識するようにしています。

実際にやってみた個人的な感想としては、少し効果もある気ががするので、これについては別の記事でも書いてみようと思っています。

腹圧という軸で見えてくるもの

逆流性食道炎の原因は一つではありませんが、「腹圧」という軸で整理すると、これまで個別に調べてきた筋トレ・肥満といったテーマが、すべて一本の線でつながって見えてきます。さらに便秘も無視できない要因であることが分かりました。

逆に言えば「腹圧を高めすぎないこと」「腹圧に対抗する力(横隔膜)を育てること」という2つを意識するだけで、逆流性食道炎対策の多くをカバーできるとも言えそうです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考文献

  • Pandolfino JE, Kahrilas PJ. "The pathophysiology of gastro-oesophageal reflux disease: an overview." PubMed

この記事の内容は参考情報としてお読みください。免責事項をお読みの上、症状や治療については、必ず医師にご相談ください。