
逆流性食道炎と横隔膜の話。
私は体が細い割に時々筋トレをやっていたのですが、どうやら筋トレも胃酸逆流につながるらしいという話を以前の記事に書きました(逆流性食道炎の意外な原因)。ベンチプレスなどのメニューは露骨に胃酸が逆流してくる感じがします。その他のメニューもだましだましやっていますが、いずれにせよハードなメニューは腹圧が高まり胃酸逆流→胸焼け→逆流性食道炎という流れになってしまいます。
残念ですが、筋肉を大きくすることはあきらめて、現在の筋肉を維持することを目的に、無理のない範囲でトレーニングを行っているところです。
ただし。
すべてのトレーニングがよくないわけではなく、逆流性食道炎に効果があるトレーニングもあるよという話をしてみたいと思います。
横隔膜トレーニング
横隔膜トレーニングという言葉も今ではさほど珍しくありませんが、吸機能の向上や体幹強化に効果があると言われています。横隔膜は、胸とお腹の間にある薄い筋肉のシートです。息を吸うたびに動いて肺を膨らませ、呼吸や体幹において重要な役割を果たすとされています。
胃、食道、横隔膜の位置関係を図で示すと下記のようになります。

横隔膜が胃と食道の境界に位置しています。本来は、下部食道括約筋(LES)が胃酸の逆流を防止するのですが、逆流性食道炎の人はこの機能が弱くなっていることが多いとされています。こうした中、横隔膜の機能を強化することで胃酸逆流を抑止できるという研究結果が出ているのです。
アメリカで2021年に発表された論文では、食後に横隔膜呼吸を行うことで逆流回数が有意に減少したことが報告されています(Halland et al., 2021)。この他にも、横隔膜トレーニングのGERDへの効果は世界各国の研究で確認されており、非薬物療法としての可能性が注目されています。
筋トレとの違い
横隔膜も筋肉であることを考えると「筋トレ」と言ってしまいたくなりますが、腕立て伏せや腹筋運動などの筋トレと横隔膜トレーニングはかなり異なります。
一般的な筋トレは、負荷をかけて筋肉を収縮させることで筋肉を大きく・強くすることを目的としています。その過程で腹圧が高まり、胃が圧迫されることで胃酸が逆流しやすくなります。私自身、ベンチプレスなどのメニューで露骨に胃酸が逆流してくる経験を何度もしています。
一方、横隔膜トレーニングは「筋肉を大きくする」ことが目的ではありません。逆流性食道炎に悩む人が横隔膜を正しく・大きく動かす習慣をつけることで、胃酸の逆流を抑制する効果が期待できるという点で、一般的な筋トレとは真逆の効果があります。
横隔膜トレーニングをやってみた
この2~3日の間、実際に横隔膜のトレーニングをやってみました。
ただ、一般的に紹介されている横隔膜トレーニングは逆流性食道炎を意識しているわけではないので「横になって行う」ものだったり(胃酸が逆流しやすくなる。寝る前3時間ルールの話を参照)、椅子に座った状態で行うにしても「膝を曲げる」とあったり(腹圧が上昇する可能性)、逆流性食道炎の患者が食後に行うには適さないことが多いです。
というわけで、下記の横隔膜トレーニングはあちこちで調べた結果自己流でやってみたものです。
- 3回の食事の後、椅子に座ったまま背中を伸ばしてリラックスし、お腹と横隔膜の動きを意識してゆっくり大きく呼吸を繰り返す。30回くらい。腹部や胸に手をあてて、きちんと腹部が動いていることを意識する
- 寝る前(食後3時間、もしくはそれ以上が経過してから!)に横になった状態で、お腹の上に本を何冊か置いて、同じように呼吸を繰り返す
といった感じです。
横隔膜は目で見えるわけでもないし、手で触れられるものでもないので、「横隔膜を動かす」と意識しながら行うことが重要だと思いました。この点に関しては、筋トレで「鍛えたい筋肉を意識する」と同じ理屈かもしれません。
数日やってみた感想。
すぐに胃酸逆流が治った!と言いたいところですが、さすがにそんなにうまく行くはずがありません。ただ深い呼吸を繰り返すという体験が新鮮で、これであれば毎日続けられそうだなと思いました。私は基本的に座り仕事が多く、作業に集中するためかこれまでの呼吸は基本的に浅くなってしまっていたなと気づきました。食後や寝る前だけでなく、普段から「深く呼吸する」ことを意識付け、習慣づけるだけでも胃酸の逆流に効果があるかもしれないなと思いました。
横隔膜は重要!
逆流性食道炎に悩む人にとって、筋トレは症状を悪化させるリスクがある一方、横隔膜トレーニングは逆流を抑制する可能性があるという、真逆の関係があることが分かりました。論文レベルでも効果が示されており、非薬物療法として取り組みやすい選択肢の一つと言えます。やり方は様々ありますが、逆流性食道炎の方は横になった状態や腹圧が上がる姿勢は避け、座位で無理なく続けることが大切です。まずは食後の深呼吸を習慣にするところから始めてみるとよいかもしれません。