
内視鏡開発の本を読んだ話。
以前の記事(胃カメラと鎮静剤の話)で少し書きましたが、内視鏡をテーマにした本を何冊か読んでみました。逆流性食道炎の診断には欠かせない内視鏡がどうやって生まれたのか、戦後の技術者と医師によるなかなかドラマチックなエピソードが面白かったです。
吉村昭「光る壁画」
「戦艦武蔵」などのいわゆる記録文学というスタイルで知られる作家が、戦後胃カメラの開発に携わった技術者や医師に取材をして書いた作品です。作者のあとがきによると、主人公のプライベートの部分はフィクションであるものの、胃カメラの開発については当事者の回想をもとに執筆しているとのこと。次から次に起こるトラブルをあの手この手で解決し、製品を作り上げる過程がリアルに描かれているなと思いました。三味線の弦やコンドームまで利用するのには驚きました。
ただ、この作品で描かれている胃カメラはあくまで胃の中を撮影するためのもので、おそらく食道内部を撮影するものではないと思われます。逆流性食道炎に悩むものとしては、「食道内を撮影できる胃カメラはどの時点で出てきたのか」が気になりますが、それは引き続きの課題としたいと思います。
いずれにせよ、内視鏡開発に情熱を注ぐ人々の情熱的な姿が淡々とした文体で描かれていて、よい小説だと思いました。医師と技術者が台風で動かなくなった列車の中で一晩、胃カメラについて語り明かしたというエピソードは最後まで印象に残るものでしたし、戦後の東京の街の描写も当時の雰囲気が伝わってきてよかったです。
プロジェクトX 挑戦者たち1 執念の逆転劇
NHKの番組「プロジェクトX」にて放送された6つのエピソードをまとめて書籍化したものです。そのうちの1つが内視鏡の開発秘話を取り扱った「ガンを探し出せ 完全国産・胃カメラ開発」。2000年に放送されたもので、DVDで見られるようですが、すでに自宅に再生機がないため本を読みました。細かい開発エピソードは上記の小説をベースにしている印象でしたが、小説では拾い切れていないエピソードも多数採用されていて、面白く読むことができました。また、小説で描かれている犬を使った実験の様子や、開発に携わった医師や技術者の写真が掲載されていて、両方合わせて読むとイメージが湧きやすいのもよかったです。
この他にも胃カメラ開発を扱った本は複数あるようなので、面白いものがあったらまた取り上げたいと思います。上記に書いたとおり「食道を撮影できる胃カメラはいつ生まれたのか」という点についても、判明したら記事にしたいと思っています。
その後の進化について
これらの本で開発された内視鏡は「胃の中の様子をカメラで撮影した後、フィルムを現像して確認する」というものでしたが、その後内視鏡はすごい勢いで発達しています。医師がリアルタイムで胃の中を直接確認できるファイバースコープ、内部の様子をモニターで確認できるビデオスコープ、さらに高画質で内部を確認できるハイビジョン内視鏡システムなど。このあたりはオリンパスHPのオリンパス内視鏡の歴史に詳しく描かれています。
このような「その後」の進化の過程で食道の撮影もできるようになっていたものと思われますが、それらの開発秘話のようなものはこれまでのところ世の中には出ていないようです。「光る壁画」の続編のような作品が出版されたらぜひ読みたいところです。あわよくば「逆流性食道炎と戦った人々」みたいな作品も。
ちなみに「光る壁画」は過去にラジオドラマ、テレビドラマにもなっていて、テレビドラマのほうはDVDであれば入手できるみたいです。
まとめ
逆流性食道炎の診断に欠かせない内視鏡がどのように生まれたのか、書籍を通じて知ることができました。終戦から間もない時期に、限られた材料と技術で胃カメラを作り上げた医師と技術者たちの執念は鬼気迫るものを感じました。
どちらも逆流性食道炎の患者としてだけでなく、純粋な読み物としても楽しめる内容でした。放送されたドラマや番組も、動画配信があればぜひ視聴したいと思う内容でした。「食道を撮影できる内視鏡はいつ生まれたのか」という疑問の答えは引き続き探していきたいと思っています。