
胃酸で歯が溶ける?という話。
私が子供の時にスポーツドリンクが販売されるようになって、他のジュースより体にいい気がして、しかも美味しいとあって、友達と一緒によく飲んでいました。小遣いには限りがあるので好きなだけ飲む、というわけにもいきませんでしたが、夏の暑い日にソフトボールの練習帰りに飲むスポーツドリンクのおいしかったこと。
しかしその後「スポーツドリンク飲みすぎると歯が溶ける」と噂が広まると、みんな手のひらを返して誰も飲まなくなったのを覚えています。
そして歯が溶けるというこの現象、胃酸の逆流も関係してくるんです。なかなか怖い話です。
歯が溶ける「酸蝕症」
「酸」によって歯の表面が溶けてしまう現象のことを酸蝕症といいます。文字通り「酸が歯を蝕む」ということですね。酸蝕症の病態と臨床対応(2015)によると、酸蝕症の割合は2015年時点で26.1%。日本人の4人に1人が酸が原因で歯が溶けているということになります。
歯を溶かす酸は、様々なものに含まれています。代表格は、酸性の度合いが強い飲食物。私が子供の頃に急速に普及したスポーツドリンクも歯への影響が指摘されています。その反動で「スポーツドリンクを飲みすぎると歯が解ける」という注意喚起がなされていたのではないかと推察します。
また、国際歯科連盟によると、2012年のロンドンオリンピックで、アスリート399人のうち44.6%に酸蝕症の症状が見つかったということです。FDIはこの発表の中で「スポーツドリンクを飲むときは、繰り返し使えるストローを使って、歯に(スポーツドリンクが)触れないようにしましょう」と呼びかけています(出典:SPORTS DENTISTRY Guidelines for elite athletes, SPORTS DENTISTRY)。
そしてこの酸蝕症にも、胃酸が関係しているんです。
胃酸でも歯が溶ける
神奈川県歯科医師会のHPには、酸蝕症の要因としては柑橘類、フルーツ、スポーツドリンクなどの他に、胃酸も挙げられていました。
胃酸は強力な酸で歯が溶ける大きな原因となります。胃酸の食道への逆流を起こす原因は、逆流性食道炎や摂食障害、悪阻、食べ過ぎによるげっぷ、寝酒深酒などがあります。
逆流性食道炎の名前もしっかり記されています。
さらに、日本消化器病学会の「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021」でも「GERDと歯の酸蝕症が合併する可能性が高い」と指摘しています。
私の場合は、胸焼けなどの症状はあるものの、口の中にまで胃酸が上がってきたという経験はありません。ただ、一つ思い当たることが。
喉まで胃酸が来ていた...
割と最近の話です。喉が痛かったので、耳鼻咽喉科で診察してもらいました。喉の粘膜が腫れて赤くなっているとのことでした。そして医師から「逆流性食道炎って診断されたことあります?」と言われたのです。私がありますと答えると「喉が腫れた原因は逆流してきた胃酸によるものではないかと思います」とのことでした。最近胃酸で喉が腫れる人は多いとのことでした。
このエピソードで重要なのは「私も喉まで胃酸が来ている」ということです。となると、口まではあと少し。「口の中にまで胃酸が上がってきたという経験はありません」と気楽に書いてしまいましたが、私の歯もすでに危険な状態にある、ということが分かったのでした。改めて食生活に気をつけたいところです。
まとめ
歯が溶ける「酸蝕症」の原因はスポーツドリンクだけではありません。胃酸も酸蝕症の原因の一つで、逆流性食道炎との合併リスクも指摘されています。私自身、口まで胃酸が上がった経験はないと思っていましたが、耳鼻咽喉科で「喉の炎症は逆流した胃酸が原因では」と指摘されたことで、歯への影響も他人事ではないと気づきました。逆流性食道炎と診断されている方は、胃だけでなく歯のケアにも意識を向けてみてください。