
バレット食道の発がん率は?
前回の記事(バレット食道の話)にて、バレット食道の話題を取り上げました。私も前回の胃カメラ検査で、小さいとはいえバレット食道を指摘されたので、気にしつつ日常生活を送っているところです。
読者の皆さんの不安をあおるつもりはないのですが、気になる「バレット食道の発がん頻度」などについて取り上げてみたいと思っています。
バレット食道の発がん頻度
胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021では、日本におけるバレット食道からの発がん頻度について次のように指摘しています(LSBEとSSBEについての説明は前回の記事をご参照ください)。
日本人の LSBE からの発癌頻度は年率 1.2%と推定される。SSBEからの発癌頻度は現時点では不明である
前回の記事でも書いたとおり、日本では逆流性食道炎患者におけるLSBEの頻度は約0.3%と比較的まれではありますが、その発がん頻度は年率1.2%と推定されています。思ったより高い印象です。約15%を占めるSSBEに関しては、信頼性の高い研究が不足していて、発がん頻度は不明であるということです。日本におけるバレット食道については、症例やデータが不足していてまだ解明されていないことも多く、引き続き研究が進むことが期待されます。
一方で、ACG(アメリカ消化器病学会)はバレット食道の発がん頻度について次のように指摘しています。
A person with Barrett’s esophagus has less than a 1 in 200 chance per year of developing esophageal adenocarcinoma. The overall risk of cancer may increase as the years go by, but more than 90% of people with Barrett’s esophagus WILL NOT develop cancer. バレット食道の患者が年間に食道腺癌を発症する確率は200人に1人未満です。年数が経つにつれてがんのリスクは上昇する可能性がありますが、バレット食道を持つ人の90%以上はがんを発症しません
日本の調査結果よりもかなり低い印象です。ここまで調べた結論として、バレット食道の発がん頻度は国や調査によってバラバラで、一概には言えないということになります。
国によって判断基準が異なる
そして驚いたのは、バレット食道の定義は世界的に統一されていないという点です。下記も「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021」よりの引用になります。
本邦においては、Barrett食道の診断基準が緩やかで、Barrett食道の診断に生検採取が必要で はなく、内視鏡的に食道下端にいかなる長さの円柱上皮が観察されるのみでよいため、非常に多数(内視鏡検査受診者の6~7人に1人、本ガイドラインより)の Barrett 食道が診断されている
つまり、日本でバレット食道と診断されても、欧米の基準ではバレット食道にならない可能性があるということ。どうなってんだ?と言いたくなりますが、私の結論としては「心配しすぎても仕方がない」。現時点では、担当医と相談しながら定期的な内視鏡検査を受けることが最善の対応と言えそうです。
悩みすぎないことも大切
参考までに私の場合は、2年前の胃カメラ検査にて1ミリあるかないか程度のごく小さなバレット食道があると指摘されました。担当の医師によると「このレベルだったら気にしなくて大丈夫。日常生活に気をつけることと、症状が出た場合や出そうな場合には薬を飲んで様子を見てください」とのアドバイスをいただき、注意して過ごしています。ちなみに薬はタケキャブを処方されました。薬については常にかばんに入れておくことで「いざとなったらこれを飲めばいい」という安心材料としての役割が大きいと考えています。
小さいとはいえバレット食道だと診断されたため、私もご多分に漏れずインターネットで発がんリスクを検索しまくって落ち込んだ時期もありました。ただし、仮にLSBEだったとしても、日本の基準で1.2%という発がん頻度であれば、他の病気にかかる可能性のほうが高いのではないか?と考えると、あまり気にしても仕方ないと思うようになりました。
それよりも大切なのは「今以上に症状を悪化させないこと」。バレット食道の主な原因は逆流性食道炎であり、バレット食道の発がんリスクはその長さに比例するとされています。そう考えると、最大の対策は「胃酸逆流を適切に防止する」ことに尽きると思います。過去の記事であれこれ書いてきた日常生活における対策をきちんとした上で、医師の指導にしたがって適切に薬を服用することが大切だと思います。
まとめ
バレット食道の発がん頻度については、日本のデータではLSBEで年率1.2%と推定されていますが、SSBEについては現時点で不明です。ただし日本の場合LSBEのケースが非常に少ないため、今後の研究が待たれるところではあります。また日本と欧米では診断基準が異なるため、データの単純比較が難しい状況です。
大切なのは数字に一喜一憂するのではなく、逆流性食道炎の対策を継続して症状の悪化を防ぐこと、そして定期的な内視鏡検査で経過を観察することです。バレット食道と向き合いながら、焦らず日常生活を送ることが大切だといえます。